
実際に介護を必要とする高齢者の数は全高齢者のうちの4割にのぼると言われています。(厚生労働省)
一度歩けなくなってしまうともう自分の足で何も使わずに歩くことはできないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。
なぜなら歩行器を使わないと歩けなかった84歳の母が自ら自力で歩くことができるようになったのですから。これは実際に私がトレーニングを担当して半年間かけて復活をした実話になります。
今歩くことができないあなた、もしくはご両親にぜひこのトレーニング方法を伝授してくださいね。
人間の器官の中で唯一筋肉だけは成長をする器官と言われています。骨や皮膚は劣化し鍛えても鍛えられない部位ではありますが筋肉だけは違います。
まだまだ未来は明るいですよ。
それでは早速みていきましょう。
歩くために必要な筋肉とは?
まず初めに、歩くときにはどこの筋肉が使われているかを把握しましょう。そうすることで鍛える筋肉が明確にわかります。
そしてしっかりと理解を深めた上でとトレーニングを行うとトレーニング中も目的意識がはっきりするため何のために取り組んでいるのかがわかります。
トレーニングで大切なことは今取り組んでいるトレーニングが自分自身の目的に合っているのか?がわかっていることです。
よく鍛えている筋肉を意識しながら動かしたほうがいい。というのも神経を集中させてより効率の良いトレーニングを行うためですね。
ではまずこの画像をみてください。
歩くために使われる筋肉がすべて書いてあります。とはいえこれらの筋肉全てを覚えるのは大変ですよね。
大丈夫です。全ては覚える必要はありません。特に大切なのは着地と蹴りだしです。着地と蹴りだしがしっかり行えるようになれば自然と「かかと~つま先」の部分はクリアされます。
着地に働く大臀筋・中臀筋
歩く際の着地に必要な大殿筋・中臀筋というお尻の筋肉がまず大切になります。
殿筋は人体の中でも2番目に大きな筋肉であり、衰えてくると着地の際にバランスを崩すことがあるのです。着地がうまくできなければ当然蹴りだすこともできません。
また殿筋を鍛えることで姿勢が正しくなります。骨盤と隣接している筋肉であるために骨盤のゆがみを左右するといった働きもあります。
この殿筋は座りっぱなしでいたり、歩く頻度の減少により筋力低下になります。
知らず知らずのうちに筋肉は低下していくのでしっかり鍛えておきましょう。大臀筋は着地の安定に関与するということを意識しながらトレーニングをしていきましょうね。
着地と蹴りだしのハムストリングス(大腿二頭筋)
大腿二頭筋はももの裏にある大きな筋肉です。
画像をみると筋肉が2つに分かれているのがわかると思います。大腿二頭筋は股間節の伸展と呼ばれる機能をもっています。
股関節伸展とは足を立った状態から後方に伸ばすことです。片足を上げて後ろに引いてみてください。すると裏ももがギュッと収縮する感覚がわかります。
着地と蹴りだしの両方の機能に関与する筋肉ですのでとても大切です。臀筋と同じく姿勢の維持にも関与する筋肉であるために歩くための重要筋肉の一つと言えるでしょう。
蹴りだしのヒラメ筋、腓腹筋
続いては蹴りだしに大きく関係するヒラメ筋、腓腹筋です。長母指屈筋なども含まれますが、皆さんはふくらはぎの筋肉と覚えておきましょう。
ふくらはぎのトレーニングをするとこれらの筋肉が総動員して同時に鍛えることができるため細かく覚える必要はありません。
ただしふくらはぎを鍛えることは蹴りだす力を身に着けるということですからここは覚えておきましょう。
蹴りだす力というのは身体を前進させる一歩を生み出すということ。しかし蹴りだす力がないと足全体で着地することに繋がりペタペタ歩きになります。
ペタペタ歩きは腰痛発症に関連しているためしっかりかかとで着地できるようになるためにもふくらはぎの筋肉を鍛え、蹴りだす力を養うことが必要なのです。
姿勢が崩れないための腹筋
最後に着地と蹴りだしを鍛えることができたら歩行動作中のバランスを保つための腹筋を鍛えることも取り入れましょう。
着地と蹴りだしの間にあたるカラダの状態を維持するのは腹筋です。体幹という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
体幹は身体の中心にある部分を意味します。
正確には手足頭を取り除いたすべての部分ですが、主要になるのは腹筋なのです。
高齢者の方は腹筋が弱くなると背中が丸まり、便秘になったりと歩行以外の日常生活でも大切な役割を持ちます。
是非鍛えていきましょう。
歩けるためのトレーニング実践編
椅子を使ってのスクワット(大臀筋&大腿二頭筋)
歩くことが今現在難しい方は一般的なトレーニングをするのもやっとかもしくはできないですよね。
ただそのまま放置するとますます筋力は低下します。そこでまずは椅子を使ったスクワットにトライしてみてください。
椅子につかまって行うため意外と簡単にできますよ。特に足腰に不安もあるしバランス感覚にも不安がある方が多いと思うので、そういう方は椅子を使って体制を崩しても安心なトレーニングから始めましょう。
1 椅子を両手でつかむ
2 掴んだままやや胸を張りお尻を後方に下ろしていきます
3 かかとに力を入れながら下ろせるところまでいったらまたお尻を持ち上げましょう
4 15回~20回を目安に行いましょう
5 最低2セットを目安に行いましょう
椅子を使ったスクワットpart2(大臀筋&大腿二頭筋)
このように椅子を後ろにおいて行うハーフスクワットもおすすめです。最初に紹介したつかまりながら行うスクワットができるようになったら次のステージとしてこのスクワットを実践しましょう。
後ろに椅子があることでもし体制を崩したとしても座れるのでケガの心配などはありませんね。
こういったところからスタートすることでも十分だと思います。自分自身の力量に合わせてトライしてくださいね。
覚えていますか?大殿筋は着地に大腿二頭筋は着地&蹴りだしに必要な筋肉ですよ!
1 椅子の前に立ちます
2 ゆっくりお尻を後方に引くように下ろしていきます
3 椅子には座らずにまたお尻を上げていきます
4 15回~20回を2セット行いましょう
ハムストリングス(大腿二頭筋)トレーニング
椅子に座ってカーフレイズ(ふくらはぎ)
それでは蹴りだしに重要なふくらはぎの筋肉を鍛えるトレーニングを行いましょう。
まずは椅子に座った状態から始めてみましょう。画像はバーベルを膝の上に乗せていますが、皆さんはペットボトルを乗せたり、まくらを乗せたりして負荷をかけていきましょう。
何もない状態でも負荷はあるので使わなくてもけっこうです。
蹴りだしを意識してキュッキュッとリズムよく繰り返していきましょうね。
1 椅子に座ります
2 つま先を残したままかかとを上げます
3 かかと上げて2秒キープ後ゆっくり着地します
4 15回~30回繰り返しましょう
5 2セット行いましょう
立位のカーフレイズ(ふくらはぎ)
続いて少しレベルアップしたふくらはぎトレーニングです。
座っている状態とは違い体重がふくらはぎにかかるので椅子に座るよりも強い負荷がかかります。
1 椅子のせもたれにつかまります
2 姿勢を正し、背伸びをするようにかかとを上げます(体重は前方方向にかけましょう)
3 上げきったところで1秒キープしましょう
4 15回~30回を目安にしましょう
5 最低2セット繰り返しましょう
トレーニングの頻度は?
1週間に2回~3回
トレーニングの理想的な頻度は1週間に2回~3回と言われています。
これはトレーニングによって疲労した筋肉を回復させるためです。筋肉が強くなるメカニズムはトレーニングによって筋繊維が傷つき、再生とともに強く太くなることです。
この傷ついた状態から回復するまでに24時間~48時間かかると言われているため間を空けることが大切なのですね。
すると1週間に2回~3回という計算になります。特に高齢者の方え歩くことがやっとの方は運動不足になりがちです。
回復までに時間を要することが考えられるのでまずは月曜日と木曜日のように2日はトレーニング日と設定して初めてみるといいでしょう。
専門でみてくれるトレーナーさんがいらっしゃれば状態を確認しながら頻度やトレーニングメニューを変えて行うことができますが、ご自身でやられる場合は前述のとおりに行いましょう。
トレーニングの回数は少し多めがいい
今回紹介したトレーニングの回数をみてみると15回以上に設定してあると思います。これは1セットあたりに反復する回数が15回以上という意味です。
回数に関しては負荷が重くなれば減りますし、負荷が軽ければ多くできますよね。
ちょうど15回~20回程度できる回数というのは筋持久力を高めるトレーニング方法になります。歩行というのは瞬発的な動きではなく、持久系の動きですよね。
つまり筋肉も歩くことに目標を定めているためこれらの回数設定にしてあります。歩けるようになった84歳の母もこのやり方を実践しました。
歩けるようになるために、他に気を付けることは?
食生活を正すこと
歩くこととは一見関係のないことのようにも思える食生活。
しかしトレーニングした筋肉を合成するのは正しい栄養素です。中でもタンパク質は筋肉を合成するための主要栄養素です。
お肉、魚、豆腐、たまご、チーズなど摂取していますか?
せっかくトレーニングをしているのにタンパク質が不足していると筋肉は作られません。とてももったいないことです。
またタンパク質合成を促進させるビタミン類やミネラル。栄養素を意識すると難しく感じますが1食当り最低でも5種類の素材を食べるようにしましょう。
すると調子がよくなりますし、歩けるようになるまでの期間が短くなることもあります。
睡眠をとること
睡眠もタンパク質合成に関係します。
睡眠中の成長ホルモンは10時~2時の間がもっとも盛んに分泌されます。この時間の間に眠っていることでトレーニングで披露した筋肉の回復が早まり、また翌日の目覚め、快適さが変わります。
不眠に悩んでいる方はぜひトレーニングをしてください。適度な疲労が快適な睡眠へと導いてくれます。トレーニングは一石三鳥の効果がありますよ。
編集長のつぶやき
この記事を書いたハッピーシニア編集長のつぶやき…
いかがでしたでしょうか?今回は実際に私が担当したケースをもとにお話ししました。
私の母ではないですが、依頼者は娘さんだっため母と設定したことをご了承ください。最初は本当に歩行器がないと歩けない様子で私も大丈夫かな?と不安もありました。
しかしそのお母さまはもっと旅がしたい、やり残したことが沢山ある!というのです。2度も癌を発症して今もなお抱えているため余計にやり残したことがない人生にしたいという明確で強い目標がありました。
そこで今回紹介したトレーニングをして頂き、1か月ごとに変化をみていったのです。
「歩きたい」ただその思い一心に取り組まれていたことを今でも思い出します。結果的に半年が経過すると歩行器がなくても歩ける状態に。
これはあまりにも早い成果で驚きでした!あとで娘さんに聞くと家でも時間と体調を考えながら実践していたということで素晴らしいなと感じました。
特別なトレーニングではなく本当に簡単にできるトレーニングを継続したからこその賜物です。
皆さんもやればできる!諦めたら終わりです!早速今日から実践しましょうね。
わからないことがあればコメントなり連絡くださいね。