
カラダは年齢とともに衰えていくのは皆さん承知の通りだと思いますが、まさか飲み込む力まで衰えてしまうとは思ってもみないことです。
足腰の筋力低下などは歩いても疲れる、階段の上り下りが辛くなったなど多少実感することがあります。
しかし嚥下力は気づきにくいものです。
そしてお正月に高齢者がお餅をつまらせて亡くなるケースが後を絶たないですよね。昔と同じ感覚でいるといつの間にかあなたも嚥下力が低下している可能性があるのです。
しかし、誤嚥を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか?
実際に飲み込む力は養うことができるのでしょうか?
はい、この嚥下力は鍛えることができます。カラダの筋肉を鍛えるのと同じように飲み込む力もパワーアップすることができます。
今回はそのやり方を紹介しようと思います。そして今後の食事に不安を抱えながら過ごすのではなく、安心安全に快適な食事が取れるようにしましょうね。
目次
誤嚥とは?
まずは誤嚥とは何か?をしっかり理解することから始めていきましょう。
皆さんは毎日の食事でどんなことを意識されているでしょうか?
カロリーを抑えることや、あまり食べすぎにならないようにすること等でしょうか?
実は意外と意識されていない一度に口に含む量というのが誤嚥を予防する上で重要になります。
例えば口いっぱいにご飯を食べたり、急いでお茶を飲んだりしてむせた経験はありませんか?
このむせた状態を誤嚥といいます。
本来食べ物は食道を通り3か所の狭い関門を通り胃へと流動していきます。
しかし誤嚥は食道ではなく、気道に食べ物が入る状態のことを意味し、その先には呼吸器官である肺があります。
するとカラダは一生懸命肺に入らないように咳を促し追い出そうとするのです。咳は一種の防衛反応であることがわかります。
しかし高齢になると全身の筋力低下や、病気による免疫機能の低下により飲み込む力も衰えていきます。
また、脳梗塞を発症すると後遺症により舌の運動機能も低下するため嚥下力が低下し誤嚥に繋がることがあります。
誤嚥の恐怖とは?
誤嚥を起こすとどんな恐怖とリスクが待っているのでしょうか?
誤嚥によるリスクは主に2つ存在します。これらをよく理解して日常生活に活かしていきましょう。
①窒息
誤嚥によう最も怖いことは窒息です。
窒息は食べ物が気道を防ぐことで、肺の呼吸循環が機能せず結果的に死亡するケースがあります。
呼吸困難、窒息になった場合早急に処置をしないと生命の危機が迫ってきます。窒息時から約10分間何も処置をされなかった場合救命率は0%というデータもあります。
都内や政令指定都市のような人口の多い地域であれば救急車の到着も早いことがありますが、地方の人口の少ない地域では救急車の到着時間も遅くなりますし、病院までの搬送時間も余計にかかります。
つまりなるだけ日頃から誤嚥をしないように意識しておくこと、そしてトレ―ニングが必要になることがわかります。
②肺炎
誤嚥による肺炎を誤嚥性肺炎と言います。
窒息まではいかずとも細かい食べ物が誤嚥により肺に蓄積されると炎症を起こします。
誤嚥性肺炎は日本の死亡原因の上位を占めるものですから非常に多く発生していることがわかります。
誤嚥性肺炎を発症し、病院で治療を受けてもやがては死に至るケースが多いことから事前に防ぐ重要性がわかりますね。
③栄養不足
一度誤嚥を起こすと食事をすることが恐怖になります。
するといつもより量が食べれなくなったり、水分をとることにさえ抵抗が生まれます。
すると栄養不足や脱水症状になりカラダが弱ってしまうのです。
そして進行していくと免疫機能も低下し病気の誘発が起こるようになります。
嚥下機能チェック
あなたは大丈夫ですか?
ここでは嚥下機能チェックを行います。よく自分自身と照らし合わせてみましょう。
チェック項目
①食事中にむせることはありませんか?
②食後に声がかれたりしませんか?
③食後に咳がでることがありませんか?
④食べ物がのどに引っかかる感じがありませんか?
⑤よく噛まずに食べていませんか?
⑥飲み込んだ後も口の中に食べ物が残っていませんか?
⑦最近むせやすいことはありませんか?
以上これらの中に2つ以上当てはまるものがあれば誤嚥の危険性が高いと言えます。
誤嚥を発症しやすい人とは?
高齢者の中でも極めて誤嚥を発症しやすい人というのがいます。
あなたは当てはまっていませんか?もしくは自分の両親が当てはまっていないかチェックしておきましょう。
①脳血管障害を発症したことがある
②中枢性神経系変性疾患(パーキンソン病など)
③認知症
④糖尿病
⑤口腔、咽頭の不衛生
⑥嘔吐後
⑦胃食道逆流
これらの症状を一度でも発症したことのある人は特に注意が必要です。
家族の皆様もよく理解しておくことが大切です。
自宅でできる誤嚥を防ぐトレーニング
自宅でできるトレーニングを行うことによって誤嚥を予防し飲み込む力が増すことがあります。
これからその主なトレーニングを紹介します。
①腹式呼吸法
誤嚥予防に大切なトレーニングの一つに腹式呼吸法があります。
呼吸機能を高めることで、気管に食べ物が入った場合でも排出しやすくなります。
腹式呼吸のやり方を紹介します。
まず鼻から息を5秒かけて大きく吸ってお腹を膨らませます。できるだけ長く沢山の息を吸いましょう。
次に息を吐きながらお腹を凹ませていきます。この時も一度にギュッと吐くのではなく5秒かけて吐くことが大切な要素になります。
このトレーニングを食前に3回繰り返してください。
腹式呼吸によって呼吸機能が高まるために嚥下力が向上してくるのです。
②発音トレーニング
パ行(パ、ピ、プ、ぺ、ポ)、ラ行、タ行、カ行、マ行を繰り返し発音します。これらの音を発する時には、食べ物を飲み込む時と同じ器官(口、舌、のどなど)を使うので、器官を鍛えることができます。
③首、舌のトレーニング
まず首のトレーニングですが、これはストレッチの要素も含まれています。
大きくゆっくりと首を前後に動かしたり、左右に倒したりすることで首のトレーニングになります。
筋肉をストレッチすることでほぐし、肩から首にかけての緊張をとりましょう。
呼吸は自然体を意識しましょう。
次に舌のトレーニングですが、大きく舌を出したり、左右に動かしたりしてみましょう。
舌の動きが滑らかになることでスムーズな嚥下に繋がります。
この2つのトレーニングは食べ物を含まずにできることなので自分で安全に行うことができますね。また最低限回数の制限をしましたがその日の体調によって変えていきましょう。
自分に合ったペースで行うことが大切ですからね。
口の中を清潔に保っておくことも大切
嚥下障害は飲み込む力がないことを意味しますが、そのまま毎日の食事を続けていくと、食べカスが残ります。
すると口内細菌が繁殖し歯周病を併発することがあります。
この状態で誤嚥した場合、肺に細菌が入ってしまうため重症の肺炎を引き起こすきっかけにもなりかねません。
常に口腔内は清潔に保つことが大切なため毎日の歯磨きも徹底しましょう。
誤嚥した時に家族ができることは?
誤嚥は本当に怖いことです。
軽い症状であれば命に関係することはありませんが、万が一高齢者の家族が誤嚥で窒息しそうになっていたら何をしたらいいのでしょうか?
前述したように窒息した場合の救命率は10分経過すると0%になります。
またもし助かったとしても脳に重大なダメージが加わるので後遺症が残ることもあります。
そうならないように家族が窒息を解除させる方法も合わせてみておきましょう。
背部巧打法
まず一つ目が背部巧打法と呼ばれるものです。
これは一般的に用いられる手法であり背中をたたいて食べ物を出す方法です。
肩甲骨の間を手のひらでたたきます。
ただしポイントはたたくときに、下から上に滑らせるようにたたくと異物除去がしやすくなります。
5回~10回程度たたきましょう。
腹部突き上げ法
背部巧打法で異物除去できない場合は、次に腹部突き上げ法を実践しましょう。
これは背部巧打法よりも強力な方法になるため、まずは背部巧打からトライしてダメだった場合に使います。
誤嚥した場合は主に座っている姿勢が多いと思います。
画像は立った状態ですが、座った状態で同じように行って良いです。
突き上げる方法であるため誤嚥した本人も苦しいかもしれませんが、異物除去が目的であることから有効と考えれます。
万が一この方法でも除去できない場合は迅速に救急車を呼び、続けて腹部突き上げ法を行ってください。
編集長のつぶやき
いかがでしたか?
嚥下力を高めるためのトレーニング方法の紹介をさせて頂きました。
是非今日から実践してください。一度誤嚥すると、癖になることがありますので注意が必要です。
家族も含め、みんなで強力することで、快適な食生活を送ることができますね。